ランリーマン第1話

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はじまり

「今度能登万葉の里マラソンに一緒に出ません?」

会社の同僚からのお誘いだった。

「良いですねー。出ましょう。」

二つ返事で答えた。

当時からスポーツは好きだったので楽しそうなものには飛びついた。

潜水士時代

2006年大学を卒業した。

大学在学中からスキューバダイビングにハマり、潜水士免許も在学中に取得した。

インターンで訪れた潜水会社に入社した。

4月から毎日現場での修行の日々が始まった。インターンは岐阜県大垣市であったが、入社後の赴任先は大阪府豊中市だった。

アルバイトでお金を貯めて買った中古のオデッセイに布団と着替えだけを積んで会社の寮に引っ越した。はじめての一人暮らし。と思ったら、先輩たちとルームシェアで3DK3人暮らしである。

先輩たちは自分が食べた食器も洗わない。

早い日には朝3時に起床して現場に向かう日々、行きつけはワークマン。

新人の仕事は運転と潜水士の補助業務で、あまりに忙しすぎ、当時の記憶はあまりない。

潜水士(工務部)を希望していたものの、大卒者は基本的には営業担当だった。潜水士は潜水専門学校卒の人や外部のフリーランスのダイバーにお願いしていることが多いからだ。

それでも潜水士になりたくて入った会社だったから、ずっと希望し続けていた。

そんなある日、大垣から同期同い年のTが赴任してきた。

彼も営業担当だったものの潜水士を希望していた。

転職してきたTとは同期ということもあり意気投合した。

私たちの希望は思わぬ形で叶うことになる。

辞令

潜水機動隊

潜水機動隊という欄に私とTの名前があった。

「なにそれ?名前だけかっこいいやん。」

所長代理から呼び出された、私とTは潜水機動隊になった。

とにかく名前だけかっこいい新設の部署である。

「何をするんでしょうか?」

とTが所長代理に尋ねた。

「お前ら2人の部署で自分で営業して、現場も自分でする。0〜100まで自己完結させる部署として新設されたから、頑張ってくれ。」

「ええ〜!」

っと心の中で二人とも叫んでいたが、もちろんそんなこと言えない雰囲気。

「はい。わかりました。」

二人揃って答えた。

Tとは現場がないときは自宅が近所という事もあり自転車で一緒に帰っていた。

二人で今後について話しながら帰った時間は唯一落ち着ける時間であり本音が話せる唯一の友人だった。

話尽くせないときはそのまま私の自宅で一緒に夕飯を食べながら話をした。

何故か彼とは戦友だからか、お互いまったく気を使わず通じ合うことができた。

そんな二人の部署も稼働して半年が経った。

まだ何も生み出してはいない。公共工事の営業であった為、夏場に営業をして年度末の残予算で発注される潜水工事の入札待ちだった。

年末になるといくつかの工事を受注できた。一つ決まると次々と決まり繁忙期に突入した。本来であれば、営業はそこで工務部へ工事を振るものの私たちの部署は工事まで自分たちで完了しないといけない。

フリーランスの頑固オヤジを連れて当時担当していた広島、山口を2年間走り回った。

頑固オヤジに怒られながら少しづつ現場の仕事を覚えて自分も潜水士の一員として現場に入れるようになっていた。

2級土木施工管理技士も当時最速で合格した。

当時の合格率が20%〜30%くらいを合格したもんだから調子に乗ってすぐ後にあった2級管工事も受験したが、不合格だった。

資格オタクとなった私は技能検定も含めて10種類以上の資格を取得した。

これで営業ではなく工務部になろうという魂胆である。

しかし、その反面当時の給料はかなり少なく、これだけ大変な思いをしているのにこの給料かと不満を持っていた。

さらに当時の会社はワンマンオーナーで気に入られることが昇進の唯一の道であり、媚び売る金魚の糞たちが上層部には多かった。

「俺、やめるわ」

Tとも転職のことは何度も話した。

Tは転職組だった為、奥さんがもう転職してほしくないとの事だった。

「俺は家建てたところやし、反対もあるから辞められないわ。」

そんなある日、事件は起こった。

大垣の後輩が潜水事故で亡くなった。配管に吸い込まれたらしい。

婚約もしたと聞いていたし、この事故はかなりショックだった。

もっとショックだったのはオーナーの対応だった。

オーナーは本人のミスと言い葬式にも出なかったという。

その事件が起きた後、私は退職を決意した。

事故の翌日、場所は違えど同じような工事で潜水していた。

「お前はこれで死んだのか。」

スーコースーコーと潜水中の息使いの中で考えていたら、急に怖くなっていた。

息子は当時2歳。

家に帰って寝顔を見ると「まだ死ねない」という想いが強くなった。

潜水士は生命保険にもろくに入れない。

死んでも何も残せない。

Tに伝えた。

「俺やめるわ。」

ランリーマン第2話

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